「奥州曙光」

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2010年5月31日月曜日

#30 口蹄疫は子どもにとっても大事件

 罪のない牛や豚まで殺処分。感染が拡大している宮崎県の口蹄疫問題で、政府は発生地から10キロ圏内のすべての牛や豚をワクチン接種した上で殺処分することを決めた。また、殺処分に当たっての手当金交付や、埋設地の確保、必要人員の増員を速やかに実施する。農家には一頭あたり牛60万円、豚4万円を手当てする。現在のところ、殺処分される家畜は25万頭を超え、農家への補償額は250億円程度と見込まれている。

 川南町のある養豚農家では、発生以来、口蹄疫と戦ってきたが、ついに感染が確認され母豚まで感染が広がった。我が子同然に育ててきた豚が弱って死んでいく姿を見続けなければならず、夜も眠れない毎日を送っている。「養豚は素晴らしい仕事」と子どもたちにも教え、「将来は一緒に養豚しよう」と言ってくれる子どもたちに苦しさを見せないように振る舞ってきたが、もう限界。地獄の中をはいずり回っているような気持ちで、誰に怒りをぶつけたらいいのか分からないという。

 「町がつぶれる」という新聞報道もあったほどの地域で、学校教育だけが影響を受けないはずがない。今月に予定していた運動会を延期するなど、学校行事にも影響が出ている。また、小学校のPTA会長さんに、同じ小学校に子どもを通わせている畜産農家から相談の電話がかかってきた。「被害が蔓延しつつある地域の小学校に、我が子を通わせていていいのか」もう1件は全く逆で、「自分の牛の感染に気づかず子どもを学校に通わせ、ほかの農家の子どもにウイルスを持って帰らせたら大変なことになる」という相談であった。畜産農家が多い地域での、それぞれの農家の複雑で切実な心境はピークに達している。

 町では早速、教育委員会と校長に相談し、農家の子どもが自主的に学校を欠席する際の扱いや、事態が収束した後の学習面や精神面でのサポート体制について協議した。人口1万7千人あまりの日本有数の畜産の町・川南町で、町長以下、町をあげての対策は、今、この瞬間も続いている。また、町内の小学校5校と中学校2校では、いろいろな配慮をしながら教育に取り組んでいる。今回の事件を受け、改めて、危機管理は校内だけの問題ではないこと。町の大事件は学校の大事件であり、子どもの大事件でもあることを思い知らされた。

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