「奥州曙光」

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2010年11月11日木曜日

#142  森鴎外と正露丸  その2











おなじみの薬と言えば、他にマーキュロがある。正しくはマーキュロクロムの水溶液で、通称「赤チン」と呼ばれた。イタズラ盛りの私の手足はいつもキズだらけであったが、その殺菌・消毒に使われたのが「赤チン」であった。同じ殺菌・消毒の目的で使われた希ヨードチンキが茶色なのに対して、色が赤いので「赤いヨードチンキ」の意味で「赤チン」と呼ばれた。ところが、マーキュロクロムの化学式は「C20H8Br2HgNa2O6」で、見てのとおり水銀(Hg)を含む化合物である。そのため、水銀中毒の危険性が指摘され販売が中止になった。

 さて、正露丸である。当時の陸軍では、微生物による感染症などに効くと期待し、脚気などにも効能があると思われていたらしいが、腸の殺菌効果はほとんどない。しかし、大腸の過剰運動を抑える作用が腹痛に効き、腸からの水分分泌を抑え下痢に効くということが明らかになっている。このため、食べ物や飲み物が原因で起こる腹痛や下痢以外に、ストレスや風邪などで起こる軟便など幅広い効果・効能が確認されている。一方、「赤チン」であるが、日本では、製造工程で水銀が発生するという理由から1973年頃に製造が中止された。しかし、常備薬として求める声が多く、海外で製造した原料を輸入して現在も販売されている。また、無色のマキロンが消毒薬として登場し、「白チン」と呼ばれる。

 今も、私の家には正露丸があり、赤チンも白チンもヨードチンキもある。昔お世話になっただけでなく、今もお世話になっており大切にしたい。それは、薬の世界にとどまらず、人間の世界も同じである。

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