「奥州曙光」

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2010年5月24日月曜日

#26 もんじゅのミスから学ぶ

 長い間、運転を停止していた福井県敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」が、14年5ヶ月ぶりに運転を再開した。しかし、制御棒挿入操作にミスがあって試験を一時中断した。これについて日本原子力研究開発機構は、手順書に具体的な操作法の記載がなかったことを明らかにした。操作ミスした運転員は、「微調整棒」とよばれるこの特殊な制御棒の操作訓練を受けたこともなく、実物をこの日、初めて操作したという。

 原子力機構によると、試験終了後に原子炉の出力を落とすために制御棒19本のうち2本を挿入しようとした。しかし、1本が入りきらなかった。その原因を調べたところ、制御棒を最後まで挿入するには操作ボタンを長押しする必要があるが、運転員は制御棒の全挿入操作は初めてで、長押しが必要と知らなかったらしい。

 思いおこせば、もんじゅは1995年にナトリウム漏れ・火災事故を起こして運転を停止した。だからなおさら新聞報道のように、「操作法を知らなかった」ではすまされない。「知らない者に運転させた」ことが問題で、「操作をシミュレーションする設備も無い」ことこそ大きな問題であろう。このようなお粗末と言える状態で、果たして日本の原子力発電は大丈夫なのか。安全と言えるのか。大きな疑問を禁じ得ない。

 翻って、教育現場である。今年度新しく教師となった先生方が教壇に立ってから、もう一ヶ月以上になる。「もんじゅ」の運転員と違って、教えることのシミュレーションは教育実習で経験済みである。しかし、児童・生徒との細やかなやりとりや、表情や動作から心の揺れを察する微妙な感性については、教えられて身につくものではない。やはり、学校内におけるベテランの先生方による、折に触れての短いプッシュや大きなスパンを見通した長押しが欠かせない。異常を知らせる警報が学校内に鳴り響くことのないよう、学校をあげての見守り体制が必要である。新任の先生が児童・生徒に直接指導する前に、他の教職員も含めた事前打ち合わせや学年部職員によるシミュレーションは、どれほど念入りに行われたのであろうか、心配はつきない。14年間も操作することがなかったために、細かな運転操作が引き継がれなかった「もんじゅ」。では、各校における初任者教員がゼロか数名という秋田県の現状で、長い間秋田県教育界が培ってきた不易の教育文化は、今後もきちんと引き継がれるだろうか。折しも、先週の水曜日、来年度の秋田県教員採用試験の実施要項が発表され、採用予定者数はこれまで同様72人程度であった。これまた、大きな憂いに他ならない。もんじゅのミスから学ぶ、これこそ本当の「もんじゅの知恵」と言うのではないだろうか。

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